LRT都市サミット広島2009(その3)
この記事は、先日の記事 「LRT都市サミット広島2009(その2)」 の続きです。
成り行きで、第2部 パネルディスカッションの記録からテキストを起こしています。必ずしも正確ではなかったり間違っている箇所も多々あると思いますのでご了承下さい。結構な文字数ですので、特に興味がある方だけどうぞ・・
▼広島大学大学院国際協力研究科 教授 藤原章正 氏
さて昨日、この LRT都市サミットの第1日目がございまして、その中で市長会議が行われました。そのアウトプット・・ 成果としてサミット宣言が公表されました。私にとってその宣言の中で心に残るキーワードが 3つぐらいありました。これからその3つのキーワードを軸にして、パネリストの方々から、それぞれ焦点をあてながら、お話をしていただきたいと思います。
それではまず一つ目ですが、「人と地球環境に優しい乗り物」・・ これが LRTだということを主張されています。これについて、いくつかお話を伺いたいと思います。
部谷さんは映画美術監督ということで、映画作品を通じて多くの人にメッセージを日頃出されているわけですけど、「人に優しい乗り物」 という観点で LRTへの思いとか期待とかございますでしょうか?
▼映画美術監督 部谷京子 氏
私は映画の撮影現場を決めるために、色々な街を訪ねています。魅力的に映る街を選ぶ、そこに街の活気がある、そこに街の景観を通して見える人の営みといったようなものが景観からも読みとれるような街というのを撮影現場として選んでいるように思います。
今日は、富山、高知、鹿児島、広島の LRT化も含め、景観をこれから、緑地化を含めて考えていくという色々な写真を見せていただいた時に、非常に私の目に魅力的なものに写りまして、これからやはり LRT化がどんどん進んでいくことで、私にとっても、撮影の現場として魅力的な街が増えていってくれればいいなと。是非、その街を訪ねてみたいなと思った。
やはり、秋葉市長がおっしゃったように、そこにある人の営みが見えるということを、文化度を示す象徴であると非常に感じています。なので、路面電車のある街がもう文化度の高さを象徴しているなと。とても映画の背景として魅力的であるなと感じています。
▼広島大学大学院国際協力研究科 教授 藤原章正 氏
秋葉さんがおっしゃいました人を引きつける力、部谷さんの訪れてみたい・・ これの原動力になっているのが LRTだということで、今後都市の魅力というものに大きく貢献するような気がします。
同じような内容で 「人と環境に優しい LRT」・・ 特に先ほどご紹介いただいた中で、鹿児島の事例と言うのは、とても都市計画にマッチした事例ということでありました。鹿児島市の森さんに今一度、軌道内の緑化及びその効果をお話いただきたいと思います。
▼鹿児島市長 森博幸 氏
LRTの特徴の中に環境に優しい、人に優しい、そういうお話がありました。鹿児島市では緑豊かで快適な環境作りを進めていこうということで、環境面に配慮した取り組みとして、路面電車の軌道敷緑化を今進めているところであります。この目的はヒートアイランド現象の緩和、都市景観の向上を図っていく、そのことで、潤いと安らぎのある都市空間を構築、しいては、ヒートアイランド現象の緩和に・・・ が街の魅力アップにつながる。そのことが・・・ また中心市街地の活性化にもつながっていく。
昨今、地球温暖化ということが進んでいるようで、鹿児島市では気温が 35℃以上になる猛暑日が大変多くなっている。平均気温についても、1950年に 16.5℃であったものが、50年後の 2000年には 1.9℃も上昇して平均気温 18.38℃になっている。大変ヒートアイランド現象が顕著になっている。
夏場に1時間間隔で車道、そしてまた軌道敷・・ 芝生の軌道面の温度を測定しますと、車道のアスファルト舗装面は午後 10時以降も上昇している。芝生の面は全く上昇していなかった。また真夏の午後 3時における温度は、緑化した芝生軌道敷内では 17~18℃、整備前よりも低く抑えられている。大変ヒートアイランド現象の緩和に大きな効果を持っている。
その他、軌道を芝生化したことで、電停で市電を待つ方々が大変に涼しさを感じることができるようになった。そのことが潤いとなり、安心して安全な・・・ につながっている。また、軌道敷の緑化は騒音の低減にも効果がある。軌道から 20メートル離れた地点で聞こえた音が、8メートルまで近付かないと聞こえない。大変騒音の低減にもつながっている。そういった面でも大変大きな効果があるものと思っている。
▼広島大学大学院国際協力研究科 教授 藤原章正 氏
(略)
それでは、次は山根さんに移りたいと思います。先ほど人や地球環境、或いは地域の環境に優しい LRTということなんですが、実は、これを実現するにあたっては、なかなか大変な問題がありそうです。計画をたてる段階で、いかに住民や市民の方の合意を取るかということも一つ大きな課題となっています。山根さんは、これまで NPO等として、市民の目線から提案・提言をなさってきているということでしたので、今一度、市民や住民が LRT計画にどのように関われば良いか、お話をしていただけますでしょうか。
▼路面電車を考える会 山根政則 氏
この図は、ちょうど 10年前の 1999年に LRT研究会を作って、その時に広島地下鉄案があった。広島地下鉄案の原案は、お金 2,200億円の20年計画で完成する。この市内に西広島から広島駅、西広島から・・・ という企画だった。これはどうだろうか? LRT研究会で相談して始めたことは、今の20年後の広島地区の人口と産業の見込みと、その時できあがる地下鉄と LRTはどちらがいいだろうかということで議論した。最初から地下鉄はダメということではなかった。その結果は実にはっきりしていました。
赤い線のように西広島から平和公園まで線路、それから平和大通りを東に行って富士見町から広島駅へ・・ こういう LRTを 2次に分けてつくる。その時にやることは、優先信号とアンダークロス。アンダークロスというのは道路の下をくぐるだけの電車の線路です。あの時の広電の速度は平均 11.5キロ。停留所の時間も入れてですよ。ところが、もし優先信号無しでアンダークロスだけでもやったら、とたんに平均速度 18キロ。アンダークロスと優先信号をやると 24キロ・・ 倍以上のトータル速度、しかも正確です。これを見本につくりたいということで、秋葉市長に出した。市長さんも、その時、・・ ともかく軌道線を LRTを河原町まで延伸する都市計画だという話だった。これは、もし橋ができれば・・ 緑大橋と平和大橋ですかね・・ 橋ができれば実現する。具体的な案は色々なさっているようです。
次、これはエピソードです。一枚の絵葉書から始まった。この絵は、たまたま LRT研究会で集まった時に、絵葉書を持ってきた。実は、100年前に広島市の横川から可部まで、日本で初めての路面バス・・ 公共バスですね。走った時の絵葉書です。日本で最初の営業運転をやったと説明してもらった。ほう、これは面白いね。日本初で広島がやったというのは知りませんでした。私どもは、これを元にして、銅像を作って横川駅に飾ろうよ・・ (略) 私どもの提案は、こういう形で遊歩道に屋根を付けてもらい、この場所に日本初のバス発祥記念の銅像を作りたい。模型をモデルにした銅像を作って、台座を作って、我々市民としてお金を相談したら 600~700万円かかるので、募金してやろうという提案にした。横川駅全体の改良提案と大屋根を造るのを、横川の街の商店街へも・・ 提案を応援して貰った。JRの方には真っ直ぐな改札にしてもらった。この案で秋葉市長のところに持っていってお願いした。(略) その時は、既に上屋を造る命令が出てたらしく、それを止めて、銅像ではなくて、本当の大きさのバスが実現した。現実の大きさの昔のバス。マツダの方がエンジンを作って走らせるまでやろうと・・ 盛り上がるんですね。広場のデザインがレトロになっているのは、広場のシンボル・・ 広島市が 100年前に日本初のバスをやったということとつながったというデザイン。何でない 1枚の絵葉書から始まって、うまく盛り上がるとここまでいってしまう。
3番目、マツダ球場ができました。(略) かつて 2年前に建設の案が出た時に、私は広島駅から歩いていった時に、真夏、私の足で 13分。これはちょっと暑いなという感じでした。それで案を作ったのは、 LRTを真っ直ぐ延ばして、宇品線の廃線跡が元々あるんですから、それを利用して、単線でぐるっと一周して、送り込む時はどんどん市内から乗り入れをやって、ここで溜めとけばいい。出るときはぐるっと回って・・。これは、最初から言ったらお金が無いということになるでしょうから、今すぐ実行する動きはいらないと考えている。(略) 道路 (大洲の通り) の方、バスは全然ダメですね。いくらカープファンでも、3年~5年経ったら、真夏は暑いからテレビで見ようという風に変わる。その時がチャンスです。もし市内から混まないで LRTが球場に入っていく、終わった時に帰れるようになっていたら・・ そこで初めて・・。私は無理矢理やろうという訳ではなくて、仕掛けを持って市民の気持ちが変わるのを待って実行する提案でおります。たぶん私のような年長は、数年経ったら、どうしても 「真夏はしんどいね、テレビにしようや」 となるのが LRT建設の動機になる。
山根氏が管理運営されている Webサイト 『路面電車とLRTを考える館』 には、今回お話しされた内容に関して、詳細にまとめられていますので、ここから各ページへ直接リンクさせていただきます。パネルディスカッションでの説明の際に使用されていた画像・図面なども掲載されていて、理解を助けてくれます。
> 広島LRT研究会 軌道交通改良提案書 (1999)
> 横川駅結節点改良市民提案 (2001-2003)
> 広島新球場にはLRTを (2005-2006)
▼広島大学大学院国際協力研究科 教授 藤原章正 氏
(略)
豊橋市では市民との共同イベントを色々実践されているということでした。もう少し詳しくご紹介下さい。
▼豊橋市長 佐原光一 氏
先ほどご紹介いただきました市電を愛する会の方たち中心に、市民に市電の良さ、市電の味わいの深さ、そして市電に乗って街を移動することにより色んなことを発見できる・・ そんなことを広めていただいている。先ほどご紹介したポストカードとかカレンダーもそういったものです。その他に全国的には 6月10日の路面電車の日がありますが、豊橋市ではその他に 4月10日・・ 市電の日として大きなイベントをうっている。市電を愛する会の方たちが精力的に活動されたり、またその仲間の方たちが模型の電車・・ 子供が乗って走れるような電車を提供していただいて、少しでも市電に親しみを持ってもらいたいと思っている。それだけでは足りない部分として、色々な生涯学習などの機会が開かれている。そういったところでも、やはり市電を愛する会のベテランの方たちによって、豊橋の市電の歴史を語っていただいたり、市電に乗って回る色んなルートの紹介をいただいたすることで、市民の皆さんと一緒になって、市電をこれからも残していこうじゃないかと、そしてより発展させていこうじゃないかということを考えていただく機会をたくさん持っていただく。こういう風に思っています。
(つづく) > LRT都市サミット広島2009(その4) -2009.11.05
** 過去の関連記事・・
> LRT都市サミット広島2009(その2) -2009.11.02
> LRT都市サミット広島2009(その1) -2009.11.01
> LRT都市サミット広島2009開幕!! -2009.10.31
| 固定リンク | 0
コメント