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2009.11.05

LRT都市サミット広島2009(その4)

20091031_lrts04

この記事は、先日の記事 「LRT都市サミット広島2009(その3)」 の続きです。
成り行きで、第2部 パネルディスカッションの記録からテキストを起こしています。必ずしも正確ではなかったり間違っている箇所も多々あると思いますのでご了承下さい。結構な文字数ですので、特に興味がある方だけどうぞ・・

▼広島大学大学院国際協力研究科 教授 藤原章正 氏
それでは、サミット宣言の中で二つ目のキーワードに移ります。二つ目は 「まちづくり」 という言葉だったと思います。(略)
とりわけ、午前中の事例紹介にもありましたけども、富山の LRTで街が随分変わったという報告を受けています。ここで富山の森さんには、改めて富山市で LRT導入によってどんな風に街が変わったのか、言葉としてコンパクトシティというような言葉もありましたけども、どのような苦労があったのか、こういった点をご紹介いただきたいと思います。

▼富山市長 森雅志 氏
富山のライトレールが供用を開始したのが平成18年4月、計画を発表したのが平成15年5月ですので、丸3年で運行を始めることができました。その直後に岐阜県庁に行きましたら、地元の新聞の一面に 「廃線のJR線を再生させる富山、路面電車を廃止する岐阜、漁夫の利の福井」 とありました。岐阜の車両は富山市にも来ているので、漁夫の利の福井と富山ということになる。つまり、岐阜で廃止した電車・・ 車両を福井と富山で利用されている。
それは、それぞれの街の考え方だと思うんですね。道路上にある路面電車を廃止して街づくりを進めるというのは一つの選択肢ですし、せっかく残った路面電車を大事にして街づくりしようというのも、その都市の選択肢だと思うので、どちらが正しくて、どちらが間違っているということではないと思う。市民と一緒に考えながら、将来をにらんで街づくりをするという意味で、富山市の取り組みとしては、路面電車が大変大きなウエイトを占めるということ。
先ほどご紹介いただきましたが、環状線化で赤い線で引かれているところを繋ぐと、街の真ん中に路面電車のサークルができますので、対角線上に電車を置いて、一日中ぐるぐる回っているというものを作ります。12月末に運行開始ですが、ウィーンのリングのような感じですね。初めて街を訪れた方も、やがて新幹線が来た後、こんな風に地上レベルで上のライトレールと繋がりますので、エスカレータで地上に降りると路面電車が待っていて、それで市内の中心部を循環できる。初めて来た方も安心して街を歩けるというという構造を作り、かつ、この周辺にこれからの公共施設は凝集させる。都心部は人口が減少していますし、小学校も維持できないので、学校統合した跡地がたくさんありますんで、図書館だとか美術館だとか、高齢者のケアハウスだとか色んなものは、これからは郊外に作らずに街の中につくる。
そして、街の中にできた路面電車のサークルの方へ向けて、様々な公共交通の質を高めていく。電停やバス停の近くに住む人には、具体的に住宅一軒につき 30万円とか 50万円とか補助金をもう出していまして、そういうところに緩やかに人の住まいを誘導することによって、人口減少地帯であっても、或いは 90歳代でお一人で暮らす高齢者が激増する時代であっても、そういう皆さんに必ずしも車に頼らなくても暮らせる街を作りたいというのが富山市の街づくりの基本構造です。公共交通を軸としたコンパクトな街づくりをしたいということです。
それで、それじゃあ人口が減るのに、都心部に人を寄せようとすると、どういう人が住むんだ・・ ということをよく聞かれます。この図面でいうと、この場所に一箇所と、この辺りに一箇所、つい最近、高齢者賃貸住宅ができました。民間の事業です。どちらも凄く高い倍率で抽選となりました。入居した方は全員 郊外に一戸建ての住宅を持っていて、そこで一人で暮らしていたお婆さんです。冬場除雪の問題だとか、ゴミを出すこと、?に行くこと、そういうことを考えると、その住宅はそこに置きながら、都心部の質の良い住空間に移っていく。つまり、デュアルハウスというかマルチハウスというか、複数の居住空間を持つ時代に段々なっていくんだと私は思っていまして、それを選択しながら老後を快適に暮らすということだろうと思っています。
それから、この界隈に色々な施設を集める・・ ここにコンサートホールがあるんですが、最近路面電車で来る人が増えましたので、幕間には積極的にアルコールを出しています。ライトレールの沿線には競輪場もありますけど、ICカードを持っている人にはビールも売ります。つまり、暮らし方が変わるということですね。車一辺倒の暮らしよりも、もっと豊かで楽しい暮らしというものが実現できるんだろうと思っています。街づくりプラス、まさに秋葉市長もおっしゃる、ライフスタイルそのものに影響を与えるだろうと思っています。
実は 3年前にこの計画を発表した時に・・ 一昨年 3日間、路面電車・・ ライトレールも富山地方鉄道の路面電車も無料にしました。無料の費用は市が交通事業者に負担しました。そうすると、路面電車の利用者は 11.5倍になった。つまり、富山市民はタダだと乗るというのよく分かった。世界の例で言うと、ポートランドへ行きますと都心部はバスも電車も無料です。郊外から乗り入れてくる時はお金を払うんですが、都心部にいる人達は一切無料なんですね。もの凄い賑わいができているわけです。さすがに無料にする分を 365日、市が支えるのは無理ですけれども、例えば富山の市電は 1日に 1万人が乗って黒字なんですね。半分は定期です。そうすると、5,000人が 200円払うと 1日 100万円キャッシュが入ってくるわけですから・・ 例えば、街の中にある商業者が 150万円出したら、第3日曜日は無料にして下さいとか、そういうことを交通事業者と交渉を始めて欲しい、こう思っているんですね。そのリーディングの事業のために市が 3日間、800万円だったか負担したんですが、確かに人の動きが変わりました。こういうことも含めて街づくりということに繋げていく仕掛け・装置としての機能は、充分 路面電車は大きいものを持っている。

▼広島大学大学院国際協力研究科 教授 藤原章正 氏
素晴らしく迫力のあるお話でした。要するに、人をいかに誘導するか。こういう街づくりに LRTが貢献しているということがよく分かりました。
それでは、広島市の秋葉さんには、同じように街づくりという観点で、先ほどの富山の都市構造の再建以外のところで、LRTと街づくりの関連につきまして、広島市の経験からご披露いただきたいと思います。

▼広島市長 秋葉忠利 氏
LRT化ということで、これは現在先ほどの統計にもありましたように、広島市内を走っている LRT、これは広電の車両ですけど 22両あるということで全国一ですけど・・ 一つにはやっぱり、もっと数が増えることで便利になる。それと、後は路線を拡充する。先ほど新球場の話しがありましたし、広島駅前に真っ直ぐ乗り入れた方が便利じゃないかという話もあります。それ以外では、西広島駅から広島駅への新しい路線を作る。どれもお金のかかることですので、すぐにということにはならないと思いますけれども、きちんとした計画を立てながら一つ一つ実現していくことが非常に重要だと思います。
LRTそのものによっての直接的な街づくりという話とはちょっとずれるんですが、広島は大変広いですから・・ デルタ部分の半径 2.5キロメートルの円内に入りますけど、その部分では路面電車を今まで以上に利用して有効に使う・・ それの一貫として、例えばトランジットモールというものを整備して歩くことで都市の魅力をもっと高める。そのためには、おそらく無料化ということも検討しなくてはいけないと思っている。実は、これも今実行中なんですね。バスなんですけれども、市内の循環バスを・・ これは、まだ無料化まではいかないですが、100円でぐるぐる回って貰って、循環バスの需要がどういう風に街づくりに役立つのかということの実験も現在やっている。例えば、それを無料化するというような社会実験も是非やってみたいと思います。
そういう形で、都心部の交通・・ 今でも大変便利ですけど、それを更に整備して効率的にしていく。その中に当然また広島はバスの街でもありますから、バスをうまく使っていくことも大事だと思います。そのバスの関連で言いますと、もう一つ広島の公共交通を支えているのがアストラムライン。この沿線は大変人口が増えています。そのアストラムラインを延伸するという計画はあるが、財政的に難しいということで、一時手が着いていない状態です。この将来もきちんと考えなくてはいけない。それに関連して、実はそれ以前には、郊外地域の団地から都心部までバスが通っていたものが廃止された。となると、団地からアストラムラインまでのフィーダーバス・・ 交通手段がないから、そこに補助金を出してバスのサービスを続けてもらう。それも期限がありましたので、最近では難しくなってきた。そこで、地域の皆さんがコミュニティバスという形で実質的にその交通事業者の皆さんと話す・・ タクシー会社が多いんですけど、そういった新しい形の市民が主体になった交通手段というものを作り出している。その一番良い例が黄金山なんです。あそこは山ですから・・ 市内にあります大変大きな山で、その黄金山に住んでいる方は山を下りて都心部に向かう。高齢者の皆さんが大変難しい。これも 1年の社会実験ですけど、コミュニティタクシーという形で公共交通を提供して、その上下の難しさを解決しながら、皆さんに都心に来て・・ 来れば、かなりコンパクトですから、歩いてもらうということを随分努力をしてやっている。それを郊外にもどんどん広げていきたい。
それだけでは充分でない場合には、交通手段のシームレス化ということで、今の我々の考えている自動車というのは、小さいものでも 4人乗りですけれども、もっと小さくして、要するに車椅子に屋根を付けた、だけど安全でそれなりに走るような車があれば、それは一つの交通手段になる。或いはセグウェイみたいな一人乗りの本当に簡単な乗り物、そういうものもできている。そういった新しい技術を使いながら、全ての色々な所に住んでいる皆さんの交通ニーズを満たしていくようなことを色々な形で積極的に前に進めていくということだと思います。
それの高速化、そして大量輸送化ということが、その中でどうしても必要になり・・ これは通勤・通学というものがラッシュ時を作り出している。全部フレックスタイムで解決できれば良いんですけど、それで全部解決できるという問題でもありませんので、それに対応する形での LRTが中心となった・・・ どうしても中心になってくる時代だという風に思います。それを中心にはしますけれども、その周辺にある色々なニーズをきめ細かく、新しい技術を使いながら、一つの都市としてまとまった形で充実していく方向を是非探っていきたい。それが新たな人の流れを作り、新しい賑わいを作っていく上で大変役に立つ。
最後にもう一つ、現在広島市に、大雑把な推測なんですけど、人が住んでいない一戸建ての家が大体 10万戸くらいある。かなりの数なんですけど、例えば、これをどういう風に使っていくかなんていうことも、こういう交通政策と一緒に、それとバリアフリー化・高齢化というような問題と一緒に考えていくことが都市の活性化に繋がる。そういうことをクロスセクションさせ・・・ 横軸の行政の仕事・・・ 色々なところで考えてもらって、これを前に進めていきたい。

▼広島大学大学院国際協力研究科 教授 藤原章正 氏
街の総合的な交通体系の中での LRTに位置づけをお伺いしたように思います。(略)
(略) 道具として、LRTは技術的な改良とか工夫があるんじゃないかと想像しますけど、ご紹介いただけますでしょうか。

▼広島電鉄株式会社 代表取締役社長 大田哲哉 氏
LRTでの街づくりというのは、先程来話しがありますように、計り知れないものがあると思います。LRTで都市作りをして大変有名になったのがストラスブールですけど、ここも最初は、できるまでの10年くらいは地下鉄にするか、或いは路面電車にするか、議論してなかなか前に進まなかった。だけど、プロットマンという女性の市長が公約でマニュフェストに LRTを造るということで、当選をして LRTができたわけです。その LRTができて、LRTの沿線、駅の周辺の住宅とか商業不動産あたりが随分高騰しました。有名なのは・・ これは最初にできたのはブルノーブルの方が早いと思いますが・・ トランジットモール・・ これは商店街を歩行者天国にして、その中に LRTを通す。これがトランジットモールですけど、バスでやっているモールもあります。要するに、歩行者天国の中に公共交通を入れて商店街を賑やかにしていくという手法でありますけど、最初は大反対があった。でも、今は成功している。作って 10年くらいですから、50%くらいの人で・・・。ただ、不動産の価値が上がりますから、賃料が高くなる。賃料が高くなっても人がたくさん来るから・・ そうすると、高級品を扱う店舗が増えてくる。近所に住んでいる方が日用品を身近なところでと思っても、なかなかそういう物を売る店が少なくなって、店の新陳代謝が起こっているという状況もあります。しかし、賑わいがあるから・・。
じゃあ、我が国でそういうことができないかということですが、どうしてもやろうと思えば、その商店街がやる気を出して貰う・・ 自分達で活力がある商店街を作ろうという、そういう気持ちがないと無理だと思います。それに色んな行政のバックアップがあれば可能になる。そこまで踏み切るというのは、なかなか難しいかなと思います。
それから、街に賑わいを創出するには、新しい沿線を作るということも、移動しやすい環境を作るということも必要です。先ほどの山根さんの市民提案の中にありました・・・ 今、我々が広島市と協議しておるのは、広島駅前大橋線と、平和大通り線でも江波線のところまで早くできないかなということ。こういうものができると、こういうところ・・ 南側に賑わいの創出ができると思っています。賑わい創出という意味からすればそういうことです。
もう一つ、LRTの仕組みですが、もっと便利にするためには車内移動・・ ヨーロッパで LRTというと・・ ヨーロッパの場合は公共交通全部そうなんですけど、車内で移動する必要がないんですね。乗ったところから、自分でボタンを押して乗って、乗ったところから降りる。集改札があるのは日本の場合だけです。特に LRTで長い 30メートルの車両ですと、下手すると中で半分の 15メートル移動しなければいけない。動いている車両の中での移動になる。もっと LRTを便利にするには、車内移動を無くすことが一番重要だと思います。今、PASPYがありますが、現在 22万枚くらい。10月17日から、広島県下の公共交通・・ JRを除く全部で使えます。JRの ICOCAはこの機械で使えるんですけど、PASPYは残念ながら JRには使えません。いずれは、相互で使えるような形にしていきたいと考えていますが、今の段階では・・・。このカードができた関係で、乗ったドアから降りてもらうことも可能になる。乗り降りも早くなりますし・・ それを何とか 23年くらいまでにはやっていきたいと考えています。

▼富山市長 森雅志 氏
今お話しのあった信用乗車は、富山ライトレールは朝 9時までに限り やっています。全てのドアから乗り降りができるということで、高校生も含めて使っていますが、全くと言っていいくらい問題は起きていませんので、これはできることなら一日中それができる社会になればいいなと思います。

▼広島大学大学院国際協力研究科 教授 藤原章正 氏
(信用乗車制度は) 日本人の文化に合っているのかもしれませんね。

(つづく) > 最終回: LRT都市サミット広島2009(その5) -2009.12.10

** 過去の関連記事・・
 > LRT都市サミット広島2009(その3) -2009.11.04
 > LRT都市サミット広島2009(その2) -2009.11.02
 > LRT都市サミット広島2009(その1) -2009.11.01
 > LRT都市サミット広島2009開幕!! -2009.10.31

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